深セン国際漁博「漁業発展建設計画展」キュレーションと展示デザイン
2023深セン国際漁業博覧会(以下「深セン国際漁博」という)は5月11日から13日まで深センコンベンション&エキシビションセンター(福田)1号館にて開催されました。深セン国際漁博は世界に向けたハイスペック、ハイスタンダード、ハイレベルの漁業の盛会で、会期中に会場の中央エリアに特設企画展「深セン漁業発展建設計画展」が展示されていました。PILLSのプリンシパルアーキテクト王子耕は漁博会のチーフキュレーター兼展示チーフデザイナーに招聘され、 PILLSアトリエは「深セン漁業発展建設計画展」のキュレーションと総合デザインを担当し、清華大学建築設計研究院有限公司がコンテンツ企画、上海風語築文化科技株式有限公司が施工を担当しました。三者は手を携わって従来の展示キュレーションと空間デザインを型破り、博物館レベルの品質でスタンダードパノラマを使用した深セン漁業青写真展示を手掛けしました。 百舸爭流(百隻の大船が流れを競う) 「深セン漁業発展建設計画展」の展示ディスプレイデザイン案は、「百舸爭流(百隻の大船が流れを競う)」というビジュアル要素を汲み取り、平面全体に無数の船が途絶えず行き来する賑やかさ、前進する壮大な勢いの画面を描き出し、全体の空間感を仕上げます。「百舸爭流、奮楫者先(百隻の大船が流れを競う、奮って努力する者が先頭に立つ)」、この言葉には、先頭になろうと奮って努力し、前進しようというポジティブな意味合いが含まれており、「鷹撃長空,魚翔淺底(鷹は空に飛び、魚は水に泳ぐ)」、人と海、万物調和のとれた共生のような詩的な連想を引き起こします。展示空間の平面デザインコンセプトは、深センに代々受け継がれてきた「耕海牧漁」の発展史へのオマージュであり、また深センを現代漁業の質の高い発展中心都市、国際海洋都市として構築してきた先駆者精神である、同時に今回の漁博会テーマ「漁粤ともに未来へ」と呼応しています。 空間デザインにおいて、壁面の造形は「海辺の岩礁」をイメージし、斜めに配置されている展示壁と展示台を用いて、ごつごつと重なる岩礁のモチーフを演出しています。波打つダイナミックを再現するよう、壁の曲がり角はクリアな角度でシャープに削られ、そこに海のパワーが秘められています。展示壁と展示台は平面配置に従ってびっしりと並び、自然と空間の囲いを形成している、四つのテーマを持つ回廊式展示エリアを区切っています。各展示エリアの展示壁はその上部に置かれている大きな片状まぐさ石を支え、まぐさ石が壁を繋いだり交差させたりして、構造全体は迫力のある荘厳かつ優雅な「巨石」群に仕上げました。 メインカラーに起用した青緑(ティール)色は果てしない海を象徴している、そして天井光膜天井主光源と合わせ、神秘的で静かながらも流れを感じられる空間を演出しています。来場者は会場2階のプラットホーム(正面玄関)の両側にある階段から降りる際に、最初に目にするのはブース全体の俯瞰外観で、前に進むとブース内部の空間に入り込んできます。展示エリアのフロアステッカーは海流分布図にインスパイアされたグラフィックデザインで、海水の流れを示す矢印らが指す方向は展示の観覧メインルートを示し、観客を導いて海を巡る旅に出ます。 この展示は、「大潮耕海」、「生態永続」、「ダークブルーへ」、「未来深セン」といった4つのチャプターで構成され、観客が展示している数十点の代表的な実物展示や映像作品、マルチメディアインタラクティブインスタレーションなどを通じて、深センはどのように代々受け継がれてきた「耕海牧漁(海を「耕し」、魚を「放牧し」)」から現代の漁業の都へと変身したかを探索し、斬新な没入型「漁」文化体験を作り上げました。同時に、初回深セン国際漁業博覧会といったプラットフォームを機に、展示会は漁業関係者およびその他の一般民衆が海洋生態と「大食物観」への関心をさらに喚起し、共に持続可能な発展するダークブルーの未来を展望していきます。 プロローグ_大潮耕海 先史時代に二回も起こった海進と海退により、深センの独特の地理が形成され、漁業繫盛の町として発展する天然条件の基盤が築かれました。古代中国人は海沿いに町を作り、海に田んぼを耕し、珠江デルタの特徴を持った水郷が築かれました。本展では、デルタ地形の形成を展示ナラティブの出発点とし、深センの海岸線をグラフィック要素として汲み取り、歴史図解のメインビジュアルに変えました。「海によって誕生、漁業で栄え」、7000年にわたる深センの都市発展歴史は、時間軸に沿って絵巻物のように目の前に広げていきます。廊下に設置した補充照明は波模様のムードライトを使用し、照らした海のさざ波の投影は地面から天井まで広がり、空間が一体になりました。 時間軸の反対側に設置している細長い明るいショーケースは観客の視線を集め、中には歴史価値のある古代の漁具や歴史写真などの博物館館蔵品を展示しています。実物展示品の横にスクリーンが設置されており、蛋民文化、東山真珠採りなどに関するドキュメンタリー映像が再生され、展示品の裏に隠されている漁業の歴史を鮮明に伝えています。「大潮耕海」は物質的の断片とメディア映像を通じこの漁業の町の今昔を多角度から展示し、漁業の町の住民たちが共通する記憶を呼び覚まします。 広東海洋大学深セン研究院が珍蔵している水生動物の標本は、一体化型デザインされた壁龕型展示台に吊り下げられて展示されています。ムードライトが醸し出した雰囲気の中、美しく多様な水生生物が観客のために視覚の饗宴をあげました。これらの標本は科学研究価値が高いだけでなく、芸術の傑作でもあり、水中世界の生命の神秘と魅力を示しました。 観客は通路の突き当りから光と影が交差する「デジタル深セン海」に潜ることができます。ここでは、プロジェクションと鏡を組み合わせて没入型の体験空間を仕上げています。投影する画面は博物美学を継承した古典「海錯図」風に描かれた深セン地元の海の生物イラストで、投影した生き生きとしている珊瑚、魚、海藻、貝たちは、来場者の周りにのんびりと回遊しています。この空間に一台の「潜望鏡」が設置してあり、来場者はレンズ越しに全国初オンラインノンストップ海底ライブ配信番組「深圳の海底の365日」を楽しめます。リアルの海底風景とデジタルの海は相互に補完し、来場者に現実世界と仮想世界が織り交ぜ、現代テクノロジーを通じ伝統芸術が活発化させ、ここしかないユニークな体験をもたらします。 チャプター2_生態永続 深センは海に向けて生きる、海洋生態が現代漁業の発展の礎となり、そのため産業発展と環境保護この二つの課題はいつも緊密に関係しています。第二展示エリアは、漁業に関連した生態保護対策を強調し、海底環境を再現した生態モデルを展示することを目的としています。展示エリアの一面の壁に大判地図を貼ることにより、ビジュアルに「深セン湾禁漁」と「南シナ海期間休漁」などの法律政策を可視化にし、また税関で押収された赤サンゴやオウムガイなどの希少な野生水生動物の標本を展示することで、漁業計画および関連する法律執行措置が深センの生態文明の構築のために緑の貢献をしたことを強調しています。 展示会は海洋大学と提携し、2.4メートルの大型サンゴ水槽を展示する、おかげで来場者は至近距離で専門照明設備が照らしている希少なサンゴ生体を鑑賞できます。同じディスプレイインターフェイスにて、ライトボックスを用いて国家重点保護水生種を展示し、公衆に「増殖と放流」措置は生態多様性回復における重要性を普及します。「人工魚礁」は海域の生態系を改善し、水生生物が集う生息環境を提供するインフラです。この展示では高精度の実物模型で人工魚礁の細部まで復元し、そして模型を海底地形を示している平面等高線図に置き、ユニークでカラフルな海底の家、紺碧の世界の新しい風景を仕上がり、来場者に深海秘境に来たかのような観覧体験をもたらします。 チャプター3_ダークブルーへ 第三展示エリアの展示ナラティブは、海から食卓までの漁業総合産業チェーンで繋げていく、展示内容は種苗育種、設備製造、養殖船など多角的な視点から切り込み、漁業技術革新、漁業ブランドの構築と漁業文化の継承まで、多方面に及んでいます。またマルチメディアを用いたディスプレイ方法を通じて深セン現代漁業発展の全過程を描きだしました。 本デザイン案は、画像+文字のグラフィック要素とマルチメディアビデオの組み合わせを利用し、産業チェーン川上産業である「ブルー育種産業」の発展の優位性を示し;寸法標識のあるフレームに現代漁業の養殖船と古代の漁船の模型が隣り合わせ置きし、模型サイズを比較することで、技術の進歩が新時代における「ブルーの食料倉庫」の重要性を強調しました。この展示会では、漁業において4つの代表的な重点プロジェクトが展示されており、来場者は地図壁に埋め込まれた電子フォトアルバムをめぐれば画像付きの関連紹介文を閲覧でき、さらにテーブル型展示台に設置している立体海洋牧場の模型を見下ろしながら閲覧できます。ここでは、「陸・港・島・海」が連動した発展スキームを可視化し、見える読める展示画像に変えられることにより、観客が「漁業都市の共栄」という美しい構想の展望を馳せます。 深セン市は、現代漁業の高品質な発展を促進する目標を掲げ、水産物に対し厳しい品質管理を執行するための「深セン製品」標準体系を立ち上げました。漁業博覧会期間に、「深セン製品」として認定された百点以上の製品がライトボックスにて画像ライブラリ形式で初公開され、海から食卓までさまざまな形の水産物が展示会に登場することで活性化され、多くの観客が惹かれました。来場者はインタラクティブ・デジタルサイネージにて「深セン製品」の詳細情報を確認でき、より鵬城(深センの別称)漁業文化の斬新的な内容を体験できます。遠くから展示エリアの外観を見ると、手前の模型置き展示台と、真ん中と奥にあるライトボックスおよび写真と画像が表示されている展示壁、それらがビジュアルの層を豊にし、限られた展示空間に奥行き感を創りました。 チャプター4_未来深セン エピローグ展示エリアでは、政策をより明確かつ鮮明に公衆へ発信するために、「意見+計画+政策」といった三位一体の頂層設計の解析と、漁業産業レイアウトの計画青写真と合わせて提示しています。それと同時に、趣味性のあるインタラクティブな魚の絵描きブースが設置されることで、来場者に漁業未来の想像に余白を持たせます。 この展示のエピローグは持続可能な発展にといった社会責任の原点に戻り、黙々と社会のために貢献してきた海を耕し魚を放牧する漁業関係者たちへの賛辞と感謝の意を表しています。私たちはこのエリアに回転式群像展示壁を設計しました。それぞれ精巧に作られている三面体には、基層の漁師、技術者、中国工程院の院士、中国科学院の院士、業界専門家、代表企業家などさまざまな職業を代表する人物の肖像画と物語を記載しています。彼らは鵬城漁業の歴史を刻んできた人であり、漁業を率いて未来に向けて波風に乗り切る舵取りです。優秀な人材の写真が一堂に集まり、今回の国際漁業博覧会を機に結束力と希望を発信しています。 「百舸爭流、奮楫者先(百隻の大船が流れを競う、奮って努力する者が先頭に立つ)」40年以上にわたる急速な発展を経て、深センは他の都市が百年以上もかかる発展の道を歩んできた、かつて「小さな漁村」の印象を一転して、中国現代的な漁業管理改革の実証区へと変貌し、進化を遂げました。「深セン漁業発展建設計画展」は、原点から出発し、没入型全体空間デザインを通じ、多様でクリエイティブなディスプレイを活かし、観客に革新的で持続可能な現代漁業の都を構築する壮大な青写真を呈し、技術を支えとし文化を核心とする漁業都市の発展理念を発信しました。今から、ここから、漁粤ともに未来へ。
プロジェクト情報 展示会名:深セン漁業発展建設計画展 展示会期:2023年5月11日~5月13日 展示会場:深センコンベンション&エキシビションセンター、1号館 設計面積:480㎡ 主催:深セン市計画と自然資源局(深セン市海洋漁業局) キュレーター・展示チーフデザイナー:王子耕 総合デザイン:PILLS/田宇馨、杜泓佚、姜星竹、鄧玥珠、黄銘湲 コンテンツ企画:清華大学建築設計研究院有限公司/任蓮志、李茂、蔡芷寧、鄭苒琦、王暁彤、張葉琳、劉嫺 施工会社:上海風語築文化科技株式有限公司 写真:白羽、鄭勲、夏同、王子耕、姜星竹