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展示ディスプレイ・デザイン
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UCCA Lab
永慶坊
無形文化遺産

永慶坊 × UCCA Lab 無形文化遺産華南初展示展示場空間デザイン

プロジェクト背景 UCCA Lab 無形文化遺産華南初展覧会「Something Begets Something More, New Tales of Saikwan」が9月25日、広州市永慶坊街吉祥坊3号の西関大屋で開幕し、PILLSが招聘を受け、展示会の空間デザインと展示ディスプレイデザインを手掛けました。展示会場は、広州初の「無形文化遺産通り」永慶坊の歴史のある建物内にあります。永慶坊は広州市内にある最も人情あふれる歴史のある老西関という街に位置し、広州の「最も美しい騎楼通り」と呼ばれる恩寧路沿いにあります。展示会場が位置するこの通りには、広彩、広繍、琺瑯、象牙彫り、醒獅、古琴などさまざまな無形文化遺産が集結し、通り沿いの西関独特の建築形態が典型的な昔の広州の風情を代表する建物です。 展示のテーマである「Something Begets Something More」(有るものから何かを生み出す)は、永慶坊無形文化遺産通りの文化気質に反映しつつも、コンテンポラリーアートと伝統の無形文化遺産との交流を促進する意欲を現しています。今回の展示会では、UCCA Labは何為、崔小清、Noise Templeら3組の中国現代アーティストと携わり、インスタレーション、ニューメディア、及びサウンドアートを含む多ジャンルを跨いだ芸術表現を通じて、無形文化遺産と現在そして未来の文脈との関係を探索することを試みます。PILLSは、展覧会のテーマである「Something Begets Something More」のコンセプトを空間という言葉を用いて解釈しようとしました。有るものから何かを生み出す、これは新旧の伝承とこれからの発展の意味を込めています。設計案は、伝統的な建築である西関大屋をベースに、内側に向かって成長して新たな空間の活力を爆発させるような空間デザインで、記憶を伝承しながら未来を探求することを表現しました。形式から空間、設計理念まで、私たちはこのような伝承を呼応しながら、アーティストと無形文化遺産記憶を繋げてゆき、現代アートと伝統技術との間の架け橋を構築しました。 有るものから何かを生み出す:新しいものが古いものから生まれる 建物改修の策略において、展示会場として使用している西関歴史建築は通りの突当りにある、そのため人込みから離れていて建物の入り口は分かりづらく、観光客が見えにくいです。私たちの設計案では、1階と2階のプロローグ展示エリアに、片壁という形式言語を取り入れ、広州の伝統建築に由来する赤と緑の色彩を凝縮して空間の量塊にすることで、従来の建築の型を打ち破り、新旧の衝突を観客に明示しながら、観客を展示会場へ誘導して、本来の街の持つ印象を活性化させます。 色とシンボルの応用においては、私たちはコンテンポラリーアートの雰囲気を見せつつも、地元の建築の伝統および思い出を伝承しながら提示したいと考えています。私たちの設計案では、伝統的な西関建築に由来する赤と緑をメインカラーとして使い、建築に元にあった伝統的な花窓と床を保留すると同時に、建物の二階にかつての共同空間記憶である金声映画館を復元し再現しました。レトロな旧型電気スタンド、昔の映画館椅子、レトロなテレビの色、9つの無形文化遺産記憶映像、これらは元の建築美学を保つ同時に、地元の空間記憶とシンボルを再形成させ、観客を代々の西関住民の古き良き思い出満載のあの時間に連れ戻します。 有るものから何かを生み出す:上下/新旧対応 展示会場となる伝統西関建築の室内空間が狭いため、伝統民居を展示空間に改造するのに私たちはさまざまな矛盾や挑戦に立ち向かいました。会場の室内空間がそれぞれの部屋に区切られ、スペース的には狭いが、上下の空間がそれぞれ対応しているので、構造はとても明晰です。この特徴を生かし、設計案のコンセプトは無形文化遺産記憶の新と旧というタイムラインを空間に対応させて構築しました。 私たちの設計策略は、展示場全体を上下それぞれ対応する3セットの空間に分割し、それぞれ異なる設計需要に柔軟に対応します。一階には未来を提示する、二階には過去を呈示する、一階に展示する3組のアーティストは現代アートの言語を通じて3つの無形文化遺産技法・芸能の新生を付与し解釈する;二階の対応する同じ位置に3組の現代アート作品がそれぞれ焦点を当てた無形文化遺産技法・芸能の実物を呈示しています。過去と未来が見つめ合い、建築の断面は無形文化遺産の歴史の縦断面になりました。 アーティストグループNoise Templeは、民俗無形文化遺産技法・芸能である広東醒獅をベースに制作した視聴覚インタラクティブインスタレーションは、観客に没入​​型の鑑賞体験を提供します。二階の対応する場所では、広東醒獅(獅子舞)の伝承者である趙偉斌に巨大な醒獅獅子頭を編んでもらい、その獅子頭は展示会場全体を埋め尽くすほどの大きく、観客は獅子頭の内部に入れるといった今までにない斬新な空間感知で獅子頭の制作工芸を没入型体験で鑑賞でき、獅子頭の内側の竹で精密に編まれた構造美を観察できます。また、獅子頭の構造に扉を設け、観客を獅子頭の中に入り、獅子頭内部の精巧なからくりを実際に触って操作することができます。そのからくりを触った瞬間に、観客はただ見る側の人間から広東省の伝説の獣を目覚めさせる獅子舞の職人に変身します。 アーティスト崔小清はオリーブ種彫り《核舟記》に基づいて創作した切り絵作品が幾層にドーム型天井から会場を囲むように吊り下がれ、オリーブ種彫りの微小な空間に広大な世界を包容できるという精神内核を、展示会場全体に拡大しています。二階の対応する場所では、形式と空間においてそれぞれ対応する円形のサウンドインスタレーションを設置し、観客に3つの異なる時代の広州の声に耳を傾けながら、声の記憶を辿って無形文化遺産であるオリーブ種彫りへ近づくよう導かれます。一階にあるアーティストの切り絵作品のコンテンツは、核舟記から宇宙まで包括している、二階の作品のコンテンツは現代から古代へ、観客は湾曲する回廊に沿って広州の都市の声に入り込み、核舟記の都市記憶に戻ります。 芸術家何為の作品《幕》は「垂れ幕」式空間インスタレーションと動的プロジェクションマッピングの組み合わせを通じて、部屋を斜めに貫通する一面の薄い紗幕で装飾感満載の空間を作り上げ、広州琺瑯の幽玄で美しき儚さを表現すると同時に、観客に無形文化遺産の現状を考えさせます。二階にある同じ空間位置に、石膏を用いて再現した琺瑯瓶と精巧な広州琺瑯瓶で一面の斜めの壁を構成し、琺瑯瓶の異なる断面形状を見せながら、両者の間に無言な対話を築きました。 中庭に展示しているアーティスト黄錦が制作したサウンドインスタレーション《打譜実験》は中国の古琴からインスピレーションを受け、簡素なシンプルの物理的構造を通じて音を奏で、細長い中庭は音をよく伝わる空間になり、古琴の気韻を古典の現代風に解釈した《打譜実験》として表現しています。 有るものから何かを生み出す:小中見大 部屋の空間スケールにサイズが極めて小さい無形文化遺産物品をどのように展示するか、これは私たちが立ち向かう設計難題です。すなわち、一粒のオリーブの種彫り、一頭の醒獅獅子頭、一本の琺瑯瓶、これらをどのように部屋のスケールまで拡張できるかという難題です。 オリーブ種彫りの展示エリアに渦巻きシェープのサウンドインスピレーションを設置することで、観客は湾曲するサウンド回廊に沿って空間の内側へと導かれ、オリーブ種彫り《核舟記》がその端に展示しており、「一」の形態で万物を包括することで、観客の感知を部屋全体のスケールから小さなオリーブ種彫まで集中させました。広東醒獅の展示エリアでは、伝統的な醒獅は獅子頭の外側に精緻な職人技を見せ、また二階には部屋のスケール等身大の獅子頭を展示している、観客はその醒獅獅子頭に入って鑑賞し、触れ合うことができる、また一階の作品が用いる没入型空間構造および感知方法を引き続き使用しながら、新たな空間的視点、感覚体験、空間スケールで獅子頭内部の複雑な枠組と精巧なカラクリを呈示し、無形文化遺産の精神的核心を再解釈しています。広州琺瑯の展示エリアでは、30本の琺瑯瓶展示品およびそれを原型に再現した石膏の琺瑯瓶とともに、琺瑯の斜めの壁を建て、異なる角度で切断された石膏瓶と30本精巧に彫られ作られて琺瑯彩瓶が共に、生き生きとした現代風景を構築し、無形文化遺産に対する人々が持つ固定な認識と印象を打ち破ろうとしています。 プロジェクト概要 まとめると、上記の3種類空間策略を通じて、私たちは現代の展示空間を重厚な文化蓄積が持つ伝統西関建築に織り込み、狭くかつ限られた室内空間を展示のナラティブ手がかりにすることで、会場が持つ空間の思い出と空間シンボルは建築から飛び出し、観客の目の前に提示しました。現代アート作品と無形文化遺産技法・芸能がそれぞれ対応する3組の作品は、芸術家と無形文化遺産伝承人を結びつけ、無形文化遺産物品を新たに表現することで、伝統文化に新たな可能性と想像力を与え、新旧の交錯は本展が掲げるテーマ「有るものから何かを生み出す」の精神内核を解釈し、そして現代美術と伝統技法・芸能の間に架け橋を架けました。

プロジェクト情報 プロジェクト種類:展示ディスプレイ・デザイン 指導機構:中共広州市茘湾区委宣伝部 クライアント:UCCA Lab ブランド:永慶坊 設計時期:2021年8月 出展アーティスト:何為、崔小清、Noise Temple(黄錦、Mian) 出展無形文化遺産伝承人:広州餅印:余兆基。象牙彫刻:張民輝。広州刺繍:李敏、王新元。広東醒獅:趙偉斌。嶺南古琴:謝東笑。広州琺瑯:楊志峰。広州簫笛:郭大強。広州オリーブ種彫り:曽昭鴻。広彩:陳文敏、譚広輝、翟恵玲。 展示ディスプレイ空間デザイン及びインスタレーション(二階部分)デザイン:PILLS リードデザイナー:王子耕 設計担当:陳瀅瀟、張少敏、周天、陸洋、汪曼穎 UCCA Labチーム: アートディレクター:尤洋 プロジェクトプロデューサー: 朱瑋琦、呉奕萱 プロジェクトコーディネーター: 呉顔如 キュレーションチーム:劉雪麗、呉顔如、張麗婷、程婧 プロジェクトコーディネーション:張楊、張景暉 プロジェクトサポート:孔令偉、呉丹、房小然、Jaime Chu、王可  施工会社:広州市斉工科技有限公司  スペシャルサンクス:広州万科企業有限公司万科南方地域ビジネス事業部 徐好好、周梓璇、譚広輝、謝東笑、趙偉斌、曽昭鴻

© Pills Architects, inc.

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